喫茶ナゾベーム

金のかからぬ道楽の日々

11杯め カロリズムでダイエット(前編)


 ダイエットに必要な道具の第一は体重計だ。何はなくとも体重計。デジタルの体脂肪計でも体組成計でも、アナログの大雑把なものでもいいと思う。とにかく毎日自分の体重を量ること。そしてその数字を直視して受け入れること。ダイエットのすべてはここから始まるし、毎日体重計に乗り続けてさえいれば、他のことをまったくしなくても「ダイエット中」と言ってよいと考えている。
 極論を言えば、体重の数字なんてどうでもいい。「自分の体の重さ」について読み上げる裁判官の前に立つ覚悟と勇気、それがダイエットなのだ。

 では体重計に次ぐ第二のアイテムは何か? 人によって答えは違うだろうし、「体重計があれば十分である」という潔さも正解だろう。つねに体重計がどんと構える表彰台の第一位と、第二位が乗る段には大きな差があると思うが、おれは歩数計を推したい。
 何度もダイエットに挑戦してはリバウンドを繰り返す中で、"脂肪を減らすには歩くのがいちばん"という結論に達した。いま続行中のダイエットも、作戦の柱は「摂取カロリーの管理」と「歩くこと」だ
 結果にせよ経過にせよ、数字として見えることが好ましい。とくにおれのような幼稚な人間は、数字がないと不安になる。「今日の歩数は○○歩で、体重はこれだけ減った」と数字としてわかることがダイエット継続のモチベーションになる。結果と経過がモチベーションとなり、つぎの結果と経過を生み出すという"プラスの螺旋"だ。

 歩数計との付き合いはけっこう長い。初めてのものは王様のアイデアで買った「とにかく歩数がカウントできるだけ」のものだった。かつて歩数計は万歩計と呼ばれていて、イメージとしてはお年寄りの道具だった。持つのがちょいと恥ずかしい道具でもあった。
 だんだん、やれ東海道五十三次バージョンだ、奥の細道仕様だのと、目先に変化を加えたものが登場し、さらには『てくてくエンジェル』やら『ポケットピカチュウ』といった子どもや女性を対象としたものも発売されることで、ユーザー層がずいぶん広がった。それが10年とすこし前だろうか。もちろんおれはほとんどのものを試した。

 歩数計をいろいろ試す中で、いちばん気に入ったのがオムロンのHJ-720ってやつ。初期モデルが発売されてからけっこう経つが、いまでもマイナーチェンジを加えられた機種が買える。
 これの優れたところは、まず歩数のカウントが正確なこと。ただ、本当に正確なのかどうかはわからない。おれが複数の歩数計を身につけて生活する中で「オムロンがいちばんちゃんと数えてそう」と感じただけなので。もうひとつの良さは、パソコンとの連動機能があること。おれがつかい始めたときは歩数計本体とパソコンをUSBケーブルでダイレクトに接続することでデータをやりとりしていたが、最新機種ではBluetoothにも対応した通信アダプターが付属しているようだ。エクセルを用いてダイエット生活の管理をしている人には好適な機種だと思う。
 とにかくおれはこの機種が気に入って、洗濯したりトイレに落としたりして壊してしまうたびに買い換えて使い続けてきた。今回のダイエットを始めるまえにも洗濯してしまい、3日干しても直らなかったので「買わねばの娘」と思っていたのだった。

 でも、ちがうのを買っちゃいました。
 いま身につけているのは、タニタの活動量計。その名もカロリズム。オムロンからタニタに鞍替えした理由は単純で、タニタの本社が家から近く、散歩でよく前を通るから親近感が湧いてきた、というもの。さらにタイミングよくタニタが取り上げられた番組をテレビで見て、「これはいい会社だ。信用できる」と、オムロンからコロッと寝返っちまったのだった。すまんね浮気性で。

 カロリズムは歩数計ではなく活動量計だ。なにが違うかってーと、歩行以外の運動・活動の強度や時間を測定し、「一日でどれくらいエネルギーを消費したか」がわかる点である。歩数計の正常進化版と言ってよいと思う。
 カロリズムはシリーズ名で、いくつかの製品がある。おれはその中で、『AM121 カロリズムスマート』ってのを買った。サイトを見たら"フラッグシップモデル"と書いてあって、「どうせ買うならいっちゃんいいやつ」と思ったので。「買えるのであれば最上位機種を買っとけ」というのが、長年の経験から得た、後悔しないための知恵なのだ。

 ネット通販で、送料込みで5000円ちょいだったと思う。
 実際に手にした現物は、想像よりも小さかった。ひと目見て「いいじゃん」と思った。
 まず感心したのはパッケージがすっきりしていてかっこよかったことだ。コンパクトでありながらフラッグシップ感が漂っていた。
 もうひとつ、装着のためのアダプターが2種類あったこと。胸ポケットに入れておくのがノーマルな使いかたのようだが、電池蓋と一体化したアダプターを換装することで、マグネット式やクリップ式に変えることができるのだ。

 逆に、ちょっと困ったなと感じたのが操作ボタンの押しにくさ。毎日つかっているうちに、「誤作動を防ぐためにはしかたがないことだ」と納得できたが、ボタンが小さくて押しづらい。また、かなり多機能なカロリズムの計測・表示機能を3つのボタンだけで切り替えるための操作方法を覚えるのにも苦労した。おれの物覚えが悪いだけかもしれないが。
 もうひとつ、現在の技術の限界ということなのだろうが、「上半身に装備しないと正確な値が測れない」というのも、すこし残念だ。夏場でTシャツだけのときは、どうしたってカロリズムが丸見えになる。おれみたいに外見を気にしなくなったおっさんならともかく、若いお嬢さんだとちょっと恥ずかしいかもしれない。もちろんそのあたりを考慮したデザインになっているのだが、やっぱり「歩数計は年寄りくさい」という初期イメージの尾てい骨はまだ残っているように感じる。

 届いたその日からおれとカロリズムのダイエット生活が始まった。……とはいかなかった。
 どうやら初期不良の個体をつかんでしまったようで、電池が半日で切れた。サンプル用電池だからといって、半日はあまりに短い。さっそくタニタのユーザーサポートに電話をしたところ、「山形にある工場まで送っていただき、検査後に修理または交換させていただくことになると思います」との回答。
 山形かよ! 「もうおれの気持ちはカロリズムなんだ。そんなに待ってらんねえよ」と、そのまま言うとただのクレーマーになりかねないので、「実は本社の近くに住んでいるので、可能であれば本社に持ち込んで預かっていただきたい」と頼んでみた。タニタ、快諾。いい会社だ。訪問の大まかな時間を決め、担当者名を教わって、翌日散歩がてらタニタに向かった。



タニタ本社。散歩でよく通る場所だが、
中まで入るのはもちろん初めて。
もちろんタニタ、無論オムロン


 翌日。カロリズムをただ預けるだけ、とおれは思っていたが、じつに丁寧な対応をしてもらった。どこか"技術"のにおいのする年配の男性が丁寧に話を聞いてくれ、その場でドライバーを華麗に操ってカロリズムを分解し、いろいろ見てくれた。結局は工場送りになるとのことだったが、「工場から戻るのを待たずに新品を送らせていただきます」というナイスな対処。結果、翌日に新品が自宅届いた。カロリズムの設定や、タニタの他の製品についてもいろいろと話を聞かせてくれて、さらにタニタファンになって門を出た次第だ。



ショーケースに並んだタニタ製品について
興味深い話をいろいろ聞かせてもらった。




あの後ろ姿は、憧れの"タニタの社員食堂"
で働く女性にちがいない。おれも食べたい。


 後編に続く。