5杯め 酒粕酒醸
「酒粕酒醸」と書いて「さけかすちゅーにゃん」と読む。朋友のマネしやすいほうはチューヤン、ネズミの着ぐるみの猫はニャンちゅうだ。
酒醸は中国の調味料で、米麹酵素の力で米を糖化させたもの。用いると料理に甘みとコクが出る。ただし日本では入手しづらく、おれは『ためしてガッテン!』で紹介された「酒かすチュウニャン」に倣って自作している。
↓ここ見りゃ全部載ってます
日本伝統あの発酵食で 驚きコレステ減効果! : ためしてガッテン - NHK
おれはなんでも食べられる。
「キビヤックは? アボリジニが食べるゴキブリは?」なんて責められると困るが、日本人がふつうに食べるものなら、たいていはいける。クサヤは勘弁だけど、あれは「ふつう」じゃないと思ってる。
唯一食べられないのは納豆だが、服用中の薬の効果を阻害するという理由で医者に禁じられているだけで、大の好物である。皮肉なのは、その薬が「血液の流れをよくするため」のものだってこと。「だって納豆も血液さらさらじゃん」と唇をとんがらがしたくなるが、医学がダメと言ってるので渋々従うしかない。「納豆が食べたいなら薬をのまずに済むように自力で治したまえ」ってことだから、食べられないことの非はおれにあるのだ。納豆もワーファリンも、悪くない。
なんでも食べられるのは、幼少時の躾のおかげだと思う。感謝している。よそのお宅におじゃまして食事をふるまわるときに「申し訳ないんですがこれはちょっと」と言わなくて済むのもありがたい。
ただし、食べられるけどあんまり好きではない、できれば避けたいってものならある。その代表が甘酒で、大学生くらいまでは大嫌いだった。同じ空間に甘酒を飲んでる人がいたらその部屋から黙って退出するほど苦手だった。その後、ガマンすれば飲めるようになったが、積極的に飲もうとは思わなかった。
落語で与太郎が酒粕を食べる場面があるが、「なぜあんなものを」と思いながら聴いていた。
甘酒の材料は酒粕だ。もちろん酒粕もあまり好きではなかった。
ところが『ためしてガッテン!』で酒粕を特集したときに「こいつはすごいかも」と思ってしまった。コレステロールを下げる効果が、ホントかよと思うほど著しいのだ。
「食べものは味で選ぶもんだ、体によいから食べるなんてのは不健全だ」と主張してきてきたおれだが、試してみる気になった。そもそも血管の障害で2年のあいだに3度も死にかけた不健康な人間には、「不健全だ」と主張する権利など残されていない。
で、酒粕酒醸なる調味料を自作してみた。こいつを様々な料理に入れて2週間ほど試してみたら、血液検査の数値が目に見えて改善された。すげーな酒粕。
ありがたいことに、酒醸を料理に入れて再加熱することで、酒粕独特の匂いがほぼ消えてくれるのだ。そればかりか、とくに和食との相性がとてもよく、深いコクが加わるのである。かといって全体の味はあっさりしたままなので、まるで自分の腕が何枚も上がったような錯覚すら。
酒粕が体に良いことの科学的な根拠は、"レジスタントプロテイン=消化されにくいタンパク質"にある。消化されずに小腸まで到達したレジスタントプロテインが脂質や油をふんづかまえて、体外に排出してくれるという。ついでに便通がよくなるというご利益つきで。
じゃあ日本酒を飲めばいいんじゃないの? と思う人もいるだろうが、この働きは「酒粕ならでは」だそうだ。粕、カス呼ばわりされてはいるが、その実態は健康に有効な成分が凝縮されたもので、米と比べるとビタミンB2は26倍、B6は47倍、アミノ酸は583倍も含まれているという。
あ、これ全部『ガッテン』の受け売りな。
「粕」は「よいところを取り去った残りのもの」という意味だが、酒粕に限ってはまったく正しくないネーミングだと言える。
ほんじゃ、酒粕酒醸の作りかたをメモしておこう。
冷蔵庫で保存した場合、2週間くらで食べきるとよいそうだ。おれの計算では、酒粕酒醸10グラムあたりのエネルギーは22Kcal。黒砂糖を入れるわりには低いと思う。一度の料理につかうのはせいぜい20グラム程度だから、そう気にすることもあるまい。
酒粕酒醸の作りかた
1.材料 酒粕酒醸550グラム(実際には蒸発するので500グラムくらい)ぶん
酒粕 200グラム
水 200グラム
黒砂糖 75グラム
酢 75グラム
おれは2週間でつかい切るために半分の量でつくっている。
2.水と酒粕を熱しながら溶く。
テキトーなタイミングで酢を加える。
3.ぐつぐつ、ぶつぶつ文句を垂れ始める。
4.黒砂糖を投下、糖化。
5.混ぜる。鍋の上はけっこう暑い。
6.こんな色になったら完成。
ちょっとくらいダマが残っても気にしない。
つかうときにはまた熱して溶くんだから。
7.冷やして密封できる容器に入れて冷蔵庫へ。